全国高校生社会イノベーション選手権(イノチャン)について

イノチャンについて

全国高校生社会イノベーション選手権(イノチャン)て何?

全国高校生社会イノベーション選手権(イノチャン)とは、イノベーションを学び実践する場を高校生に提供することを目的として設立された大会のことです。

イノチャンでは様々な分野で学んだ知識はもちろん、自分や周りの人の体験を組み合わせることで“社会イノベーション”を起こす新しいアイデアを作り出してもらいます。社会イノベーションとは社会問題の解決、あるいは新しい価値の実現を目標とした、新たな技術や仕組みの導入により生まれる人々の行動や態度の波及的変化のことです。

社会イノベーションによってもたらされる効果は私たちの生活そのものに直結しているため、特定の学問分野に執着する必要はありません。また人々がどう感じるのか、どのような体験が得られるか想像することが極めて重要です。

高校生のみなさん!ぜひイノチャンにエントリーしてください!

イノチャンロゴ

高校生の皆さんに伝えたいこと

みんなの知識や経験のかけらを集結しよう

みんなの知識や経験のかけらを集結しよう

「みなさんが社会を変える。」この一文を読んで、「高校生の私に社会を変えることなんて果たしてできるだろうか」と思ったかもしれません。確かに社会で様々な経験を積んだ大人は、高校生ひとりひとりよりも社会や科学技術についての知識量、あるいは課題を正確に理解し解決するスピードにおいて勝るかもしれません。

では同級生数名で協力して、ならばいかがでしょうか。教室を見渡してみてください。それぞれ異なるバックグラウンドや得意分野・興味関心を持っていますよね。みんなの知識や経験のかけらを集結させると何か新しいイノベーションが生まれそうな気がしませんか?

今ある技術やアイデアの組み合わせからイノベーションは生まれる

今ある技術やアイデアの組み合わせからイノベーションは生まれる

私たちは、イノベーションは既存の技術やアイデアの組み合わせによって生まれると考えています。全く新しいと思われるアイデアでも、実は既存の知識や技術の組み合わせによってできているのです。つまり、一人の天才発明家が何もないところからアイデアをもたらすことは極めてまれで、高校生の皆さんが今まで学んできたことを生かして新しいアイデアを作り出すことは十分可能なのです。その組み合わせを思いつくために今までの学びの片鱗が役立ちます。

常にアンテナを張って多くの情報に接すること、時には他の人の話を聞いて新たな価値観に触れることでたくさんの引き出しを持つことができます。

重要なのは一定の思考プロセスを経ること

重要なのは一定の思考プロセスを経ること

ただし、それだけではアイデア発想には不十分なのです。私たちが地道にアイデアを生み出すためにはある一定の思考プロセスを経ることが極めて重要なのです。

決められた思考方法のもといくつかアイデアを出すことで、複数のアイデアを一定の土俵の上で比較検討し磨きをかけることができます。また本当に必要な知識や視点は何だったのか振り返ることでアイデア発想の方法論そのものを改善し以前と全く違うアイデアにたどり着くことができます。

このような一連の流れを高校生の皆さんが実践する場としてイノチャンが誕生しました。

イノチャンは社会イノベーションのアイデアを作り出す場です

イノチャンは社会イノベーションのアイデアを作り出す場です

「みなさんが社会を変える。」この一文を読んで、「高校生の私に社会を変えることなんて果たしてできるだろうか」と思ったかもしれません。確かに社会で様々な経験を積んだ大人は、高校生ひとりひとりよりも社会や科学技術についての知識量、あるいは課題を正確に理解し解決するスピードにおいて勝るかもしれません。

では同級生数名で協力して、ならばいかがでしょうか。教室を見渡してみてください。それぞれ異なるバックグラウンドや得意分野・興味関心を持っていますよね。みんなの知識や経験のかけらを集結させると何か新しいイノベーションが生まれそうな気がしませんか?

社会イノベーションの事例

社会イノベーションの事例

ここでは社会イノベーション事例として、コロンビア・メデジン市のベレン公園図書館のケースを紹介します。
社会イノベーションとは具体的にどのようなものか、参考にしてみてください。

ベレン公園図書館の広場
ベレン公園図書館の広場

コロンビア・メデジン市のベレン公園図書館の事例

社会イノベーションとは、地域の特性や資源を生かしつつ、人々の態度や行動・価値観を変容することによって社会問題を解決しようというものです。では、実際に社会基盤学科の教授たちが関わったコロンビア・メデジン市の事例を通じて社会イノベーションとはどのようなものかを見ていきましょう。

メデジン市の概略

南米コロンビア第2の都市。標高約1500mの盆地に位置し、1年を通じて過ごしやすい気候である一方、かつては多くの住民が自衛のために家に閉じこもっていたほどの有名な犯罪都市であった。

ベレン公園図書館の内部の様子
ベレン公園図書館の内部の様子

ベレン公園図書館とは?

社会基盤学専攻(当時)の川添先生、中井先生、内藤先生がメデジン市にデザイン・建築した図書館で2008年に完成した。どのように地域に貢献できるかを考えて設計され、図書館のみならず、三つの広場や建築物を複合的にデザインした。土地柄を活かした広場は住民が気軽に訪れることができ住民同士の穏やかなコミュニケーションが生まれるようになっている。図書館内にはインターネットがあり、各種教育サービスを受けることができる。

メデジン市における社会イノベーション:ベレン公園図書館の設立

メデジン市における社会イノベーション:ベレン公園図書館の設立

1990年代

麻薬の密売が根付き、度重なるテロ行為により犯罪都市と化す
住民間の格差も大きい

1991年の人口10万人当たりの殺人率は381人
(日本の2015年の10万人当たりの殺人率は0.31人)

2003年 セルヒオ・ファハルド市長が当選

市長の方針:治安や格差という社会問題に対し、質の高い公共空間と教育によって地域と住民に自信を持ってもらう
→ベレン公園図書館の設立

2008年以降 ベレン公園図書館ができた後

住民が図書館(の周り)で人々との交流や読書、インターネットを楽しむようになる。今までは家にこもっていた住民が外に出るようになり、笑顔で集うようになる。

図書館がただ本を読む場所ではなく、教育サービスを受けたり住民と交流するなど、地域の拠点となった。

図書館をデザインしたことで、人々は危険な場所という認識から安全で居心地のいい場所と認識するようになった。

2013年 InnovativeCityoftheYearコンテストで一位に

人口10万人当たりの殺人率も24人までに激減した。
世界都市フォーラム(2014年)などの大規模国際イベントも誘致できるほどになった。

現在に至る

ベレン公園図書館を象徴する水の広場
ベレン公園図書館を象徴する水の広場

まとめ

以上、メデジン市のベレン公園図書館の例を見てきました。以前は犯罪都市として名高かったメデジン市が生まれ変わったのは、ベレン公園図書館の景観デザインを通じて人々が自分の居場所であるように認知するようになり、図書館に集まるようになるなど人々の行動が変化したからです。はじめは「外は危険だから出たくない」と考えていた住民が「図書館が新たな生活の軸だ」と考えるようになったのです。
治安が悪いからと、街の警備を厳重にしたり、膨大な時間のかかる都市計画を行っていたら、果たして同じ結果が得られたでしょうか?おそらく「外は危険だから出たくない」と思っていた人々は依然として「外は危険だから出たくない」と思っていたでしょう。そして、犯罪都市という社会課題は解決されなかったはずです。
図書館ができただけと言ってしまえばそれまでかもしれません。しかし、地域の特性と資源を活かしたこの図書館は、人々の意識を変え、そしてメデジン市を安全な街にすることに成功したのです。

参考文献

川添善行,中井祐,内藤廣(2008)「コロンビア・メディジン市におけるベレン公園図書館の建設」,『景観・デザイン研究講演集』4,86-92.
http://keikan.t.u-tokyo.ac.jp/documents/CAIE4th2008kawazoe.pdf

小松俊作,尾﨑信(2016)「景観デザインによる社会イノベーションのメカニズム分析:コロンビア・メデジン市のベレン公園図書館と福岡市警固公園との比較」,『平成27年度国土政策関係研究支援事業研究成果報告書』,1-88.
https://www.mlit.go.jp/common/001130935.pdf